『田園の詩』NO.66 「イノシシの被害」(1997.4.8)


 お彼岸も過ぎ、九州はいよいよ花の季節を迎えようとしています。花粉症も治まる頃
なので、私にとっては二重三重の喜びの時季なのです。そして、さらには待ち焦がれ
ていたタケノコも出てくる頃です。

 今年は、三月の平均気温が記録的に高く、雨も適当に降ったので、もうそろそろだと
思いつつも仕事の手が離せずにいたところ、一足早く裏山の竹林を覗きに行った女房
が「タケノコが全部やられてる!」といいながら息を弾ませて帰って来ました。

 飛んで行ってみると、竹林は隅から隅まで掘り荒らされており、タケノコの皮が無残
にもそこかしこに散乱しています。イノシシの仕業でした。


     
    今年も早々に派手に食い荒らされています。竹林全体に囲いをせねばと思いつつ
      まだ実行できていません。イノシシのなすがままです。   (09.2.26写)


 私達は、地表のちょっとした変化を目で見たり足で踏んだりしてタケノコを探すので
すが、イノシシは地中深いところのものまで匂いでわかるようです。ですから、まだ小
さなものまで探し当てて食い荒らしていました。ほとんど全滅といった状態です。

 イノシシの被害といえば、もう随分前から問題になっています。県南の山間部の町
を訪ねた時、「わが町は、人間の数よりイノシシの方が多い」と冗談半分にいってい
ました。 大分県内の町村はどこも似たり寄ったりです。

 そのイノシシが、苦労して育てた収穫期のお米を荒らすので農家にとっては死活問題
なのです。

 対策として、広い田圃の周りをトタンで囲ったり、ショックを与える電線を張ったり
して、被害をくい止めるのに必死です。それでもイノシシの被害は後を絶ちません。
(写真参照←クリック)

 そんな苦労を見たり聞いたりしながらも、お米を作らない私には、農家の人々の
悲痛な心情を十分に汲み取れておりませんでした。

 楽しみにしていたタケノコが荒らされて、改めて農作物に対するイノシシの被害に
深刻さを痛感させられました。

 どんな品物も仕上げるまでには苦労は付きものです。田舎から都会に届けられる
農作物にも農家の苦労がいっぱい詰まっています。イノシシの被害はその一部に
すぎません。                    (住職・筆工)

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